10th story【その男、ドSにつき】

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「お前って、意外と嫉妬深いのな」 「あ?何だよそれ」 「あんな見えるとこにキスマークとか……中学生かよテメーは」 リビングへ戻ろうとすると、珍しく立夏がハル兄と輝にイジられていた。 内容が内容だし、戻りづらい……。 気付かれる前に再び洗面所にUターンし、聞き耳を立ててみる。 立夏がイジられてるのなんてレアだし、ちょっと興味深かったり。 「お前、響のこととなるとアツくなるよなー。溺愛しすぎだろ」 「いやそれ、兄貴にだけには言われたくねぇわ」 溺愛……。 されてるのか俺? 確かに、いつもクールな立夏が子供みたいにキスマークの上書きをしてくるなんて…… 嫉妬ゆえに、なのか? 思ってる以上に、俺って愛されてるのかもしれない。 なーんて考えが頭に浮かんで、口元が勝手に緩んだ。 恥ずかしすぎると思っていた沢山のキスマークが急に愛しく思えてきて不思議。 「おい、いつまでそこにいんだ。朝飯できたぞ」 「……はっ!」 にんまりしながら鏡と向かい合っているうちに、いつの間にか時が経っていたらしい。 「……なんで鏡見て一人で笑ってんの。コエーよ」 洗面所に迎えにきた立夏がボーッとしている俺を見て顔をしかめた。
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