11th story【その男、溺愛中】

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「キャンパス以外で会うのは初めてっすね!桜井さん、良かったら俺んち来ません?夕飯なら俺がご馳走します!」 「……は?」 思わず間抜けな声が漏れる。 なんでそうなった? 「今日はカレー作ろうと思ってるんす!1人でカレー食うの寂しいんで、一緒にどうすか?」 「いや俺最近カレー食ったばっかだし」 「知り合いのインド人に本場のレシピ聞いたんで、是非!」 「……まじか」 本場のレシピ……か。 それ、響に作ってやったらあいつ喜ぶだろうなー。 お子ちゃま舌な響はとにかくカレーが大好きで、トッピングを変えるだけでも奇声発して喜ぶ。 そのカレー、あいつに食わしてやりてぇな。 頭の中にスプーンを手にニコニコする響の姿が思い浮かんできて、ついニヤつきそうになるのを堪えた。 「行列できる店のオーナー直伝なんで、味は保証するっすよ!」 「……ノッた」 俺がそう答えると、黒瀬は白い歯をこぼしてニカッと嬉しそうに笑った。 ……なんでそんなに嬉しそうなのか謎。 まぁいーや。 カレーのレシピ覚えるついでに絶対泣かす。 「……お前さ、まじでふざけんなよ」 半時間後。 黒瀬が1人暮らししているデザイナーズマンションにて──。 なぜかキッチンに立ってオタマを持っているのは言い出しっぺの黒瀬ではなく、この俺。 黒瀬の奴…… 無駄に爽やかに夕飯を誘っておきながら、料理の腕はからっきしらしい。 カレー作んのに悪戦苦闘する奴なんか初めて見た。 意外にも顔に似合わず不器用なのか? 普段料理をしない響ですらここまではひどくない。 信じらんねぇ……。 キッチンから5回目の悲鳴が聞こえてきたところで、諦めて黒瀬とバトンタッチすることに決めた。 大人しく待ってようもんなら何食わされるかわかんねぇし。つか、料理の完成以前に黒瀬が大怪我しそうだしな。 でもなんで飯なんか作ってやんなきゃなんねーの? ……何しに来たんだ俺は。
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