11th story【その男、溺愛中】

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「すんません……」 やたらとしょんぼりしちゃってるところを見ると、本気で自分で仕上げるつもりでいたらしい。 致命的に不器用すぎて、なんだか哀れに思えてくる。 「あの、せめて俺、サラダぐらい作りま──イテッ!」 「…………」 ありえねぇ……。 こいつ、包丁を持とうとして誤って刃に触れて手ェ切りがった。 そそっかしいにも程がある。 「絆創膏あるか?」 思わず溜息がこぼれ落ちた。 料理だけじゃなく手当までさせられる羽目になるとはな。 「えっと、確かあっちの引き出しにあったような」 「持ってくる。貼ってやるからじっとしとけ」 言われた通りに引き出しから絆創膏を取り出して、血の滲んだ黒瀬の手に巻いてやった。 こうしていると、まるで手のかかる弟に接してるみてぇに思える。 綺麗に整った顔立ちと不器用具合がアンマッチすぎて笑えてくる。 ギャップはギャップでも、これは残念すぎる。 「……ほら、出来たぞ」 絆創膏を巻き終え、黒瀬の指から手を離して顔を上げた瞬間──、 ぷにゅっと唇に柔らかモノが触れた。 「……っ!?」 驚いて身を引くと、間近でにっこりと笑っている黒瀬と目が合う。 こいつ……! 今、キスしやがった!?
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