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「すんません……」
やたらとしょんぼりしちゃってるところを見ると、本気で自分で仕上げるつもりでいたらしい。
致命的に不器用すぎて、なんだか哀れに思えてくる。
「あの、せめて俺、サラダぐらい作りま──イテッ!」
「…………」
ありえねぇ……。
こいつ、包丁を持とうとして誤って刃に触れて手ェ切りがった。
そそっかしいにも程がある。
「絆創膏あるか?」
思わず溜息がこぼれ落ちた。
料理だけじゃなく手当までさせられる羽目になるとはな。
「えっと、確かあっちの引き出しにあったような」
「持ってくる。貼ってやるからじっとしとけ」
言われた通りに引き出しから絆創膏を取り出して、血の滲んだ黒瀬の手に巻いてやった。
こうしていると、まるで手のかかる弟に接してるみてぇに思える。
綺麗に整った顔立ちと不器用具合がアンマッチすぎて笑えてくる。
ギャップはギャップでも、これは残念すぎる。
「……ほら、出来たぞ」
絆創膏を巻き終え、黒瀬の指から手を離して顔を上げた瞬間──、
ぷにゅっと唇に柔らかモノが触れた。
「……っ!?」
驚いて身を引くと、間近でにっこりと笑っている黒瀬と目が合う。
こいつ……!
今、キスしやがった!?
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