11th story【その男、溺愛中】

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「……あ~あ、せっかく憧れの桜井さんと出来ると思ったのになあ~。残念っす。今夜はセフレでも呼んで癒してもらいますよ」 「なんだそりゃ。ちゃれーなお前……」 前言撤回だこのやろう。 「こうなったら桜井さん想像してめちゃくちゃにしてやりますよ!」 「……。しかもお前、タチなのかよ」 「バリタチっす!」 「……ほう」 俺を抱くつもりだったのか、こいつは。 どう見ても俺はネコには見えんだろうが。 ともあれ、明るく笑ってる黒瀬に未練はなさそうに見える。 気まずくならなくて良かった。 こいつは響と仲良しだし、後腐れなく接してくれるのは心底ありがたい。 「んじゃ、セフレと仲良くな。カレー、あとは煮込むだけだしお前でも出来んだろ。お前包丁持ったら怪我しそうだからサラダのレタスは切らずにむしること」 「うっす!」 「……あ、例のインド人からの詳細なメモつきレシピ、早くよこしなさい」 「しっかりしてますね、桜井さん……」 黒瀬んちを出たら、スーパーにもう一度寄ろう。 今日はこのレシピを元に家でカレー作るか。 幸い時間もまだ早いし、響んちに持ってって皆にご馳走するってのもアリだな。 つかなんでこいつインド人の知り合いとかいんの。 まさかセフレってそいつのことか? グローバルすぎんだろ。 ま、どうでもいいけど。 「じゃあな、黒瀬」 「あの……桜井さん。余計なお世話かもですけど、そのまま帰るんすか?」 「──ぇ?」 玄関で黒瀬に引き留められて、ふと気付けば。 響の喜ぶ顔を想像したせいか、相変わらず元気なままの自分がいた。
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