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階段を登り終え、一番奥の205号室へと颯太を降ろしつつ歩き出す。
弱い弱い電灯がアパートの壁をボンヤリと照らしている。
その心もとない灯りを頼りに表札を見ると『入江 郁斗(いりえ いくと)』と確認出来た。
そんな弱い灯りからも直ぐに確認できる程に、郵便受けには新聞、広告、光熱費のと思われる請求書等がパンパンに詰め込まれている。
この様子を見て兄貴の事を知らない結子は更に心配になったようで呟くように聞いてきた。
「やっぱいないんじゃない...?」
「こんなの兄貴の中では当たり前だよ」
苦笑いでそう返すしかない...。
そう、こんなの昔からなんの成長もしていないのなら当たり前の事なのだ。
心の中で深いため息を吐きながら、ノックをしてみる。
「おーい!!兄貴っ! 俺だよ。鋼矢(こうや)だ」
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