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ドアの向こうから帰ってくるのは静寂のみ。
(あぁ~っもうっ!うんざりだ。どうせあいつイヤホンでもしてんだろっ!)
再度強めにノックの準備をしようとした俺の横から、結子が割って入り遠慮気味に声を発した。
「お兄さぁーん.......結子です。夜分遅くにすみません...........。
..........
郁斗さぁーん!」
おいおい...最後半ばヤケクソ気味だったんじゃ無いか?
言葉には出さないが苛ついているのが伝わってくる。
この状況を何とか早く切り上げるしかないな。
「この距離でおかしいけど、電話してみるか」
5月に入ったとはいえ、この時間になると肌にあたる風が身体を震わす。
握り締めている楓太の小さな手がカタカタ震えている。
「そうだね。荷物も車ん中だし、一旦ふうちゃんと車ん中に私達戻ってるね。 見事お兄さんに再開出来たら呼んで頂戴」
後半の台詞で顏がニヤけていたが、案の定苛ついている...。
楓太の手を俺から離し急な階段をせわしなく降りていく。
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