プロローグ

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「冗談じゃない! これのどこが手加減していると言うんだ!」    ほとんど恐慌状態になっている青年は飛燕(ひえん)。黒い髪が汗を吸い込んで肌に張り付き、光の加減によっては黄金色に見える栗色の双眸は動きに落ち着きがない。  普段は精悍で、颯爽とした印象を持たせる好青年だが、今の飛燕には焦燥でそれらが全く見えない。  飛燕という名前は本名ではない。れっきとした本名もあるのだが、“とある理由”で本名を隠し、暗号名(コードネーム)で名乗らなけれならないのである。   「機甲での戦闘データを取ると言うから応じたが……」    飛燕は独りで呟く。    身に纏う“機甲”という名のパワーアシストを兼ね備える機械化戦闘スーツ。まるで鎧のような装甲で身体を包むが、アシスト性のおかげで、機甲を着ていない生身の状態よりも素早い動きが可能である。  そんな機甲はかなりの高値である。装甲の値段は勿論だが、パワーアシストシステム(PAS)やマシナリービューシステム(MVS)といった最新技術を結集しているため、一機だけで高級車が買えてしまうのだ。  
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