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【1】
夜中に《シナノ》を出発し、ジアステイル島に着いた時には翌日の昼間だった。
天候は快晴。燦々と照りつけるような太陽の光が降り注ぎ、渇いたアスファルトが熱を放出し、蜃気楼となって滑走路の白線を歪んでるように見せる。
冷房が効いていた機内から一歩だけ出れば、まるでサウナに入ったかのような熱気が身を包む。
荷物を持って航空機から降りる飛燕は、密かに溜め息を吐いた。
彼にとってそれほど長い間、島から離れていた訳ではない。実のところ一週間ほどで帰って来たのである。
二度と踏むことはないと思っていただけに、島に帰ってきたという実感は溜め息として現れていた。
そのため、行き場のない複雑な心境が彼を困らせていたのだ。
今は『飛燕』なのだ。と言い聞かせながら、彼は荷物を輸送車の荷台に載せる。
飛燕だけではなく、飛燕の隊員である大和の四名が同様に荷物を載せていた。
「あ、暑い……」
輝希が吐いた。無理もない、ジアステイル島の最低気温は摂氏三十度を超えるのが通常だ。
稀に強風を伴う雷雨――“スコール”があるのだが、熱帯地方の雨天は湿気を高くするだけで、体感的にはより暑くなる。
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