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その日、僕は夢想に耽った。
この夢が『将来の夢』なのか、はたまた『寝ている時に見る夢』なのかは分からないけれど、ただ夢を見ながら想いを馳せた。
最初の夢は、僕がエリートビジネスマンになった夢。
夢の中で僕は、指先一つで三億円を動かすようなとてつもない人間だった。
でも、お給料はそんなに高くない。
年収は五百万円を少し過ぎるくらいだ。平均年収からすると、かなり高い方だけれど、動かす額に比べると幾分見劣りする。
僕がエンターキーを押せば、その瞬間中小企業の一つや二つ、簡単に消し飛ぶ。
僕がバックスペースを押し忘れたら、その瞬間に僕の会社は砂になってしまう。
そんな重責に押し潰されそうになっていた。
家族もいない、恋人なんて作る暇もない、かといって風俗に通うような時間もない僕は、どうしようもなく悶々としていた。
こんなのが将来だったら嫌だな、と。
僕は思った。
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