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「…………」
やたらスプリングの効いたベッドの上、僕は身体を起こした。
初めて石油を掘り当てた時、テンションが上がって無駄に豪奢な造りにしてしまった寝室の色彩が、些か目に痛い。
横に寝ている女は誰だったろう。
誰でもいいけど、ちょっと邪魔だ。
「ちょっと! どういうことよ!」
「……一億くらい渡して帰せ」
手を叩いて呼んだ屈強な男が、裸の女を担いでいく。その背中に声を掛けた。
彼は険しい顔を縦に振り、早々に部屋から出ていった。
お金なんて、四つ目の油田が出来たくらいからただの数字になっている。
掃いて捨てる程、だったらまだ手に負えたのだろうが、今や掃いても捨てる場所に困るくらいあるのだ。
「いやー」
夢の中で、将来を考える子供だった僕。
なんとまあ、無垢だったのか。
そう想いながら、凝ってもいない首を鳴らした。
「エリートみたいな貧乏人になるなんて、考えられないし。人間関係なんて金で買えるモンを重要視してたなんて――――夢の中でも恥ずかしいな」
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