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「これ、落としましたよ」
おっと僕としたことが。あまりに物思いに耽り過ぎて物を落としたのにも気付かない揚句関係ない女の子にそれを取らせてしまうなんて。
こういう時は言い訳するよりも、素直に謝って笑顔でありがとうと言えって咲が言ってたな。
一応僕達の中のモテ序列は咲が上なんです。
「あっ、ごめん。ありが……」
……あれ?
彼女の掌にちょこんと乗っていたのは、とてもかわいらしいうさぎ型の消しゴムだった。
さすがに僕みたいな男が持つものじゃ……キャラ崩壊もんだよな。
じっと消しゴムを見つめたまま硬直する僕を不審に思った鹿島さんも同じように自分の差し出した物をよく見る。
「あら? ごめんなさい。私のでしたね」
怖いよ……微笑んだよ。
何なの一体。てかそんなミスってあるの?
要は自分でその消しゴムを落として、それを拾って僕に渡したってことだよね。
――実に不可解だ
「あっ、あははは。たまにあるよねー、そういうこと。僕もこの間つい同じようなことしちゃってさ」
ここは空気を悪くしたら負けだ。なるべく相手に合わせて。
「朝伎さんもですか? よかった、私だけじゃなかった」
安心っ? まさか同族視されてる?
おお神よ。僕は究極の天然に天然だと思われてしまいました。
……お願いします。お救いくださいお願いしますお願いします。でないと……僕は……
僕は天然が大っっっっ嫌いなんです。
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