2人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、デンコ!!」
走り出したはいいものの、咲に腕を掴まれ元の場所へ引きずり戻されました。
「高崎先生だよ。稀乃は以前からセクハラを受けてるって今日話してたんだ。その時は稀乃の過剰な思い込みだと思って相手にしなかったんだ」
くそっ、どうしてちゃんと取り合ってあげなかったんだ。
もし僕のあの時の対応が違ければ……こんなことにはならなかったかも知れない。
「高崎先生って、あの高崎か?」
咲は銀縁のインテリ眼鏡を揺らしてまさに仰天。咲ってこんなリアクションしたっけ?
「そう、あの高崎先生だよ。あの人は男女問わず大多数の生徒から絶大な信頼を寄せられている優しくて頼りがいのあるとてもいい教師だ。僕もそう思ったから何も疑わなかった」
「でも、三条はお前にセクハラの相談をしただけだろ? それだけであいつを犯人扱いするのは」
優作、君は忘れてるよ。
彼女の持ち掛けは、それだけじゃなかった筈だ。
「優作もいたよね、あの時。稀乃は僕らにこう言った」
――高崎の裏を暴くわよ
「まさか……あれから一人でか? でもあいつは興ざめしたとかなんとかで」
確かに言ってた。でも
「稀乃は人一倍強がりだから」
あの時――昼休みのに見た少し悲しげな少女の面影が胸の奥から込み上げて来る。
なんで……どうして
僕は……
――彼女の力になってあげられなかったんだ
最初のコメントを投稿しよう!