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「なぁ」
腕の中にすっぽりと収まったお前に声をかける。
『…なに?』
お前は俺を見上げてその先の言葉を待っていた。
『どうしたの…?』
珍しく真剣な表情の俺に、少し戸惑いながら。
「さよならだ」
固く目を閉じながら、俺は言った。
最愛の人に向けて。
『…やだ…なんで?!』
そんな顔するなよ…
せっかくの決心が揺らぎそうだ。
「俺は、もうすぐ死ぬだろう。」
ストレートに、言い放つ。
お前の瞳が大きく開いた。
『だめっ!だめっ!死ぬなんて、そんなの私が許さない!』
悲鳴に近い叫びを聞きながら、俺はお前を一層強く抱きしめた。
『置いていかないって、約束したじゃない…』
「…」
真っ直ぐな目で俺を見るお前に
何も言えなかった。
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