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『お願い…』
『私を置いていかないで…』
涙で頬を濡らしながらお前が懇願する。
敢えて俺は答えない。
残された者は、泣く。
死者の影を思い出しては、泣く。
それだけで良い。
俺を忘れないでいてくれれば…
本当は、死よりも怖い、忘却。
きっといつかはお前も、俺を忘れてしまうのだろう。
心の中から、俺を追い出すのだろう。
それが、一番怖い…
せめて
せめて俺が生きていたことを
お前を愛していたことを残すため
少しでも、俺を思い出してもらうため
胸のロザリオをお前に託す。
『…好きよ』
お前は目を閉じ、ロザリオを握りしめながら譫言のように呟く。
「…知っている」
強く抱きしめながら言う。
『愛している…ずっと。』
その言葉があれば、俺は--
fin...
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