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「…だ、大丈夫ですか…テンパさん?」
「………ハッ!
大丈夫大丈夫ー!!」
軽く意識がぶっ飛びかけたが…女性の前で弱味を見せたら負けな気がしたので、死ぬ気で耐えた。
「そうですか。
…じゃあテンパさん、屋台を見て回りましょう!」
「うん…そうしようか…。」
…ゆっくり歩けば、そのうち異常なほどのこの心臓の拍動も治まるだろう…。
「あ!そういえばテンパさん、言い忘れてましたが見て下さいよ!
あの事件から1ヶ月…遂に私のもとにこの奇抜髪止めが帰ってきましたよ!!」
沙羅はそう言って満面の笑みを浮かべ、頭に付けられた例の目に優しくないペイントの髪止めを見せつけてきた。
……偶然目についたが、彼女、とてもうなじが綺麗である。
「警察から返してもらえたんだ。
よかったね。」
「はい!
これで私も、元気100倍ですよ!!」
沙羅は袖を捲って力瘤を作り出した。
…俺から見れば、奇抜髪止めを付けていなかった時も沙羅は超元気だったのだが、きっと沙羅にとっては元気のない状態だったのだろうと解釈しておく。
話し込んでいるうちに、俺達はいつの間にか屋台がひしめく通りのど真ん中を歩いていた。
「やっと美味しそうな食べ物が見えて来ましたね。
さぁテンパさん、まずは何を食べますか?」
沙羅にそう言われ、辺りをキョロキョロと見回していると、俺の大好物の焼き鳥の屋台に目が止まった。
「おっ!
まずは焼き鳥にしよう。」
グギュルルル~。
…焼き鳥の屋台を見た瞬間、俺の腹時計が午後6時を知らせた。
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