第3話『卑劣なる逆転』1日目・探偵

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「…………………。」 その話を聞いていたか聞いていないかは知らないが…。 (…いや、あれだけ大声出してたら聞こえるか…。) 男性はガラス越しに置かれた椅子に静かに座った。 「……久しぶりだね、雷光君。」 「久しぶりです。 …こんな形で再開するとは思いませんでした…、 …天張先生。」 この人は天張 賢(てんぱる まさる)弁護士。 …俺の師匠で世界一の弁護士であると俺は思っている。 「そうだね。 僕もまさか、殺人犯として告発されるとは思わなかったよ。」 「て…『天張先生』って……、 …この人、雷光先生のお師匠さんなんですか!?」 「そうだよ。」 「………あ、あわわわわ! これはこれはとんだ失礼を!! 先生の師匠……大師匠!! 大師匠と呼ばせて下さい!!!」 …綾音が神を崇めているかのように拝んでいる。 (……大袈裟だな、綾音は…。) 「やめてくれ、大師匠なんて。 …今はただの専業主夫さ。」 「………………。」 …その言葉を耳にしたとき、俺はとても寂しい気持ちになり、無意識に俯いた。      
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