第3話『卑劣なる逆転』1日目・探偵

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「…そうか、先生はもう弁護士を引退されたのでしたね…。」 天張先生は一昨年、自分の力に限界を感じ引退したそうだ。 「あぁ…。 …でも雷光君、今はそんな話をしている場合ではないだろう?」 「そうですね。 今は弁護人として、依頼人の無罪を立証するために、全力を尽くすべきですね。」 俺はにっと微笑んだ。 「その意気だ。 それでは、僕が知っている事件の情報を全て話そう。」 「お願いします。 …俺たち、事件の概要についてはあまり知らないので。」 「分かった、では話そう。 …事件は3日前、神奈木川の川原で発生した。 被害者は呉踊 照信(ごよう てるのぶ)…。 …僕の古くからの友人だ。」 「ええぇぇぇぇっ!!!?」 綾音がいきなり悲鳴をあげた。 「どうしたんだ、綾音?」 「…照信叔父さんが…殺されたなん…………っ。」 綾音は最後まで言いきることができず、その場にへたれこみ、大粒の涙を溢した。 (……今回の事件の被害者は、綾音の親族だったのか…。) …いきなり親族が殺されたことを知ったんだ…。 泣き崩れるのも無理はない。 「…君は呉踊の一族の人間だったのか…。 …いきなり残酷なことを言ってしまって、すまなかったね…。」 「いえ、いいんです…。 …それより、話を続けて下さい。」 綾音は涙を拭い、立ち上がった。 …現実を素直に受け入れる強いハートをもっている…それが綾音だ。 (やはり綾音は、将来有望かもしれないな。) 俺は目を閉じて、口角を緩めた。    
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