夏つったら……。

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「翔……、お前河童って信じるか?」 「…………はい?」 中学二年の夏休みが残り二週間をきった。 俺は全く手をつけていなかった宿題を片付けに、小学校からの友達、村岡 健の家にきていた。 「中二の宿題の量が一番多い気がするのは俺だけか?」 俺は健の宿題を写しながら呟くように言う。 健はアイスを食べながらマンガを読んでいる。 こいつは昔から要領がよくてなぜか知らないが夏休み前にはいつも宿題の大半を片付ける。 「そうかもなぁ。俺の兄貴、高校生だけどあんま宿題ねぇって言ってた」 「なんだよ! なんだよ! なんだよ! それはあまりにも理不尽じゃないですか!? 中二差別だ!!」 俺は世の中に叫ぶ。 「いいから手を動かせ! お前がいくら世の中に文句言おうが宿題は減ってくれねーんだよ」 くっ。 正論を言いやがって。 中二病患者め。 ヒマなら少しは手伝ってくれてもいいのに。 俺は黙々と宿題を写す。案外この作業はめんどくさい。 一冊目のサマーワークが終わったところで、健が立ち上がる。 「休憩すっか! アイス食うか?」 「食う!!」 さすが健。 さっき心の中で思ったことは全面的に撤回するぜ! ちょっとして、健はアイスを二本持って部屋に戻ってきた。 「ほい」 俺にアイスを差し出す。 「ありがとうございます。健さま、仏さま」 「ゆあうぇるかむ。時に翔よ」 下手くそな発音の英語で返事をした健が、急に真剣な顔になって俺のとなりに座った。 「翔……、お前河童を信じるか?」 「…………はい?」 俺は夏はまだまだこれからだということをこれから思い知ることになる。
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