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「……カッパ?」
俺は健が言った言葉を確かめるように反芻する。
「そう、河童だ」
「ああ。あれだろ。雨の日に着る……」
「違う。緑色で頭の上に皿が乗っているほうの河童だ」
「…………」
ヤバい。とうとうヤバい。俺の親友は暑さで頭をやられてしまったらしい。可哀想に……。
「なんだ? その人を哀れむような目は」
「いやいや。そんな目してる? 誤解だよ~。とりあえず、どこの病院行く? あ、あそこのTSU○YAの近くのところ、看護婦さんが美人ばっからしいぜ」
「マジでか! そりゃ行くっきゃないな……って違う! 俺の頭は正常だ!」
「自分で正常って思ってるあたりが、異常だな」
「違う、違う。とりあえず俺の話を聞け」
そう言うと健は、一口でアイスを頬張る。
アイスを飲み込むと神妙な顔で口を開いた。
「……この町、水神川があるだろ」
「ああ」
この町はいくつも綺麗な河川がある事で有名だ。その中でも、一際大きく綺麗な川、それが水神川だ。
「その川のずっと上流の方になにがあるか知ってるか?」
「さあ?」
「水神湖だ」
「水神湖?」
十四年、この町に住んでいるがそんなのがあるとは聞いたことがない。
「聞いたことがないのも仕方ない。俺も昨日、じいちゃんに聞いたんだ」
「……ゲンじいちゃんか?」
「そうだ」
「…………」
言いたくはないが、健の祖父、ゲンじいちゃんはホラ吹きで有名だ。
ゲンじいちゃんが言うことに、素直……というか真っ直ぐバカな健はいつも信じてしまう。
「健……、この前はツチノコだったよな」
「ああ」
「一日中、山の中を探したよな」
「蚊に身体中刺されながら」
「ああ」
「結局見つかったのは、カブトムシ三匹だったよな」
「ああ」
「健……。言いたかないが、ゲンじいちゃんが言うことはウソ…」
「違う」
健は声を低くして言う。
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