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「道は己の手で切り開くべし! 行くぞ、翔!」
「え、あ、おい」
俺が止めようとする前に健は藪の中に突入した。
……腹括るしかないか。こういうこともあろうかと用意していた虫除けスプレーは、前回からの教訓である。
「おい! ちょっと待てって」
俺は虫除けスプレーを持って健を追いかける。
それから、三時間。
道なき道を歩く、歩く。しかし、一向に水神湖は姿を現さない。
目の前にあるのは、木、木、草、土、木、木。
最早汗でTシャツはグッショリ濡れている。
もうダメだ。
死ぬ。
俺は休憩を言い出そうと健に声をかける。
「けーん……、うわっ」
急に健が立ち止まったので、汗でグッショリの背中にぶつかってしまった。
「おーい。何して」
「あった」
「は?」
「あった!! 水神湖だ!!」
健は走りだした。
おいおいおい。
マジかよ。
俺は健の後を追う。
藪の中をかき分け、かき分け、たどり着いた。
確かにあった。
いや、だけど、これは……。
「なっ! あっただろ!」
健は息を切らせながら、嬉しそうに、言う。
「いや、健……。期待を壊すようで悪いんだが、これが水神湖とは限らなくない? しかも……」
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