序章:蒼い青年

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*** 「おじいはね、もう心から笑うことができないんだよ」 ―――― それを聞いたのは、私が9歳のときだった。 ………… おじいは、いつもニコニコしてた。私の背丈よりずぅっと高い鉄棒で、逆上がりができるくらい元気だったんだよ。 そんなおじいがね、急にお布団を被ったまま寝てばかりになって、お外にも連れていってくれなくなっちゃった。 ―――― いつも決められた時間に薬を服用する。それが病気になったという証拠だということは、当時9歳だった私にもわかった。 ………… 「おじいの病気、治るよね?」 って、お父さんに聞いた。 「もちろんさ」 お父さんは言ったよ。 ―――― 「おじいの病気、治るよね?」 母にも聞いた。 「きっとよくなるわ」 母は微笑んで答えた。 ………… お父さんもお母さんも、おんなじ答えしか言わなかったよ。 ――…… だから私は、おじいに聞いた。 「おじいの病気、治るよね?」 .
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