序章:蒼い青年

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…………おじいは若い頃、戦争に行ったんだって。人を殺したんだって。 ―――― 当時の国内人口数の約半分の数が消える程の、歴史上最大の惨い戦争に、おじいはかりだされた。 一人殺した夜、怖くて震えがとまらずに一睡もできなかったという。しかし、もっと怖かったのは二人目を殺した時だった。 「慣れ」が自分に産まれてしまったのだ。 人を殺すことに、何も感じない。そんな自分が肺から血を吐く程に怖かったと、おじいは言う。 ………… 気が付いたら、おじいは笑うことができなくなっていたんだって。 私はまた涙が出てきた。 私がどんなに楽しくっても、どんなに嬉しくっても、おじいは本当に笑ってくれないの? 死んじゃった人達も、おじいも、悪くなんかないのに。 「ごめんね。ごめんね…」 おじいもそう言って、私の頭を撫でた。 「それでもおじいは、笑うことができないんだよ」 ――――おじいはニコニコしているのに、心は笑ってくれない。 「だからね、おじいの分まで笑っておくれ。いっぱい泣いて、笑っておくれ。 生きてこそできることだから、正直に生きておくれ…」 .
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