26人が本棚に入れています
本棚に追加
…………おじいは若い頃、戦争に行ったんだって。人を殺したんだって。
―――― 当時の国内人口数の約半分の数が消える程の、歴史上最大の惨い戦争に、おじいはかりだされた。
一人殺した夜、怖くて震えがとまらずに一睡もできなかったという。しかし、もっと怖かったのは二人目を殺した時だった。
「慣れ」が自分に産まれてしまったのだ。
人を殺すことに、何も感じない。そんな自分が肺から血を吐く程に怖かったと、おじいは言う。
………… 気が付いたら、おじいは笑うことができなくなっていたんだって。
私はまた涙が出てきた。
私がどんなに楽しくっても、どんなに嬉しくっても、おじいは本当に笑ってくれないの?
死んじゃった人達も、おじいも、悪くなんかないのに。
「ごめんね。ごめんね…」
おじいもそう言って、私の頭を撫でた。
「それでもおじいは、笑うことができないんだよ」
――――おじいはニコニコしているのに、心は笑ってくれない。
「だからね、おじいの分まで笑っておくれ。いっぱい泣いて、笑っておくれ。
生きてこそできることだから、正直に生きておくれ…」
.
最初のコメントを投稿しよう!