序章:蒼い青年

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………… おじいが泣いてた。優しい声だったけど、涙が出てた。 「おじい…悲しい…?」 私はおじいにきいたよ。おじいは黙って、「うん」って頷いた。 「私ね、約束するよ。おじいの分まで笑うよ。誰も笑ってくれないの、嫌だから、みんなが仲良しで生きれるように、戦争も殺人もやめてって言うよ」 おじいはにっこりして「うん、うん」って言った。 「おじい、私、おじいが大好きだよ。だから、死なないでね…」 ―――― おじいは私を抱き締めてくれた。 「死なないよ」とは、言ってくれなかった。 おじいが死んだのは、それから二週間後だった。 ………… 死なないでねって言ったのに、おじいは逝っちゃった。 「おじいはきっと見守ってくれているよ」 ってお母さんは言った。見守ってくれているだけなんて嫌。私はおじいとお話がしたいの。私がおじいに会いたいの。 ―――― でも私の願いが叶うはずなかった。 人が死ぬということを、産まれて初めて理解した。 .
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