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その中をワゴン車が猛スピードで向かってくる。中から出てきた黒い手が、葉を立ち上がらせて車に引きずり込んだ。
「何やってんだ!危ねぇだろうがっ!」
車のドアが閉められると同時に、ものすごい勢いで怒鳴られる。
懐かしい声だった。
葉は声の主を見上げてポカンとする。
「葉……か……?」
声の主はようやく我に返ったようで、葉を驚きの声で凝視する。
「これはまた、懐かしい拾い物をしたものだ」
助手席に乗っている優男が、細い目をいっそう細めて笑う。
「え?新山さんと……鮎川さん?わっ……お久しぶりです」
「久しぶり。最後に会ったのは、一年前かな。元気だった?」
「はい、鮎川さんもお変わりないようで何より…」
「ちょっとまて、会話を始める前に葉…どけ。重い」
会話を塞いだ新山が置かれた状況に助けを求める。
葉は新山の膝に正座で座り込んでいる状態で、当の本人はかなりの苦痛らしい。かといって、どくことができる程の状態でもなく、狭い運転席で格闘するしかなかった。
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