序章~屋上から見える宙~

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「はぁ…私なんでこんな学校入ったんだろ…」 赤石優美(あかいしやみ)は授業中1人ため息をついていた。 本当はこんなレベルの低い私立高校に入るはずじゃなかった、志望校は市内トップの高校だったのに…受験当日に風邪を引いたばっかりに… と入学してからずっと同じことを考えていた。 おかげて授業もずっと上の空、ずって下を向いてうつむいていた。 「赤石さん、呼ばれてるよ」 いきなり隣の席からそう声がした。 「えっ?あ、はい!」 優美は慌てて返事をして立ち上がったが、時すでに遅し 「はいじゃないだろ、授業中だぞ?人の話はちゃんと聞け」 「はい、すみません…」 叱られてしまった。 そのせいでその授業中はずっと立たされたままだった。 休み時間になっても優美はいつも1人だった。 仲良い子はみんな別の高校に行ってしまったし、元々人と話すのが得意じゃないのも原因だ。 昼食の時間も屋上でいつも1人で食べていた。 入学してもう1ヶ月近く経つのに友達もできずにいた。 「学校辞めようかな…楽しくないし、私何の取り柄もないしな、定時制に転校したいよ…」 そんなことを考えてると自然と涙が出てきた。 すると突然後ろの方から声がした。 「なんで、こんな学校入っちまったんだよー!受験のバカやろー!」 振り返って見ると、1人の男子生徒が屋上のフェンスに乗り掛かって叫んでいた。 「あ」 ふと目が合った。 優美は恥ずかしさですぐ目を離した。 「おい、何やってんだよー?」 こ、こわい… その男子生徒からそう話しかけられたが、優美はすぐさま弁当を片付けその場から逃げた。 「おーい、待てよ~!」 そんな声を無視して優美は駆けて行き女子トイレに入った。 「なんなのよもう…1人で食べたかったのに…」 今日は運が悪いのかなぁ…。優美はそう割りきって1人女子トイレで食べることにした。 そして授業が始まるギリギリまでそこにいて教室に戻った。
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