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「心配するな」
先輩は、微笑んだ。テストで凡ミスしちゃったよ、てへ。なんてくらいの軽い微笑み。
でも、先輩が相手にしてるのはそんな生易しいものじゃないのに!
僕が心配してるのに、この期に及んで先輩はスマートフォンを取り出して何かしてるようだ。いや、まさかあの機械のようなベルトは。
「先輩っ! ほんとに、逃げないと!」
「SET UP」
僕の叫びに答えたのは、機械の声だった。
その声は先輩のスマートフォンから発せられている。僕は、この声の正体を一つしか知らない。
ああ、今日はなんてついてない日なんだ! 訳のわからない先輩には出会うし、やっと解放されたと思ったのにオルフェノクとも出会ってしまうし。それに、
――先輩が、ライダーだなんて。
僕が知ってるライダーは先輩のとは少し違うだろうけど、次に何をするかは分かる。
先輩の腰に巻き付けてあるベルトの、本来ならバックルがある部分にはちょうどスマートフォンを横にしたぐらいの空洞のようなものがある。そこへ、スマートフォンを挿すのだ。
僕の予想通り、先輩は画面が青く光っているスマートフォンをベルトのバックル――空洞のようなものを、便宜上バックルとしよう――へ垂直に差し込んだ。
そこで発せられる音声は、こうだ。
「「READY 」」
僕の呟きと、先輩のスマートフォンの音声が重なる。
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