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「もう少し構ってやりたいところだが、今は後輩がいるんでな。ちゃっちゃっと終わらせてもらうぜ」
先輩なだけに、それはすごい頼もしい。だけど、少し声が震えてる。
トカゲオルフェノクは先輩の言葉が聞こえないみたいで、なんとか起き上がろうとしていた。
先輩はそれを見て止まった。サラリーマンの姿を思い出してしまったのだと思う。
確かに、倒そうと思ってもそこに人間味のあるものが一部でもあれば、戸惑ってしまう。僕でも。振り切るように、先輩は叫んだ。
「てめえを、全力で叩き潰す!」
戦うことを後悔してるような、オルフェノクと戦うことを受け入れられてないような、そんな考えを吹き飛ばすように叫んだというのが何となく分かった。
僕には分かるんだ。
先輩はスマートフォンの画面にタッチしている。何度かその操作を繰り返すと僕にもお馴染みのあの機械の声が聞こえた。
「EXCEED CHARGE」
圧縮された黄緑色のエネルギーが、バックルから手の甲へと黄緑色の線を通り、駆けていく。
これで、……終わりだね。
トカゲオルフェノクが立ち上がり、振り向くと同時に先輩は動いた。先ほどの動揺は全くなくて、どこかに捨て去ってしまったみたいだ。
先輩が走ると共に黄緑色の光は線を描き、トカゲオルフェノクへと加速する。
「!」
トカゲオルフェノクは今、自分がどういう状況かというのに気づいたらしく微かな抵抗をみせた。
だけど、そんな抵抗は意味がない。
先輩はその抵抗をものともせず、輝く拳でトカゲオルフェノクの胸を突いた。
その数秒後、そこにはトカゲオルフェノクより大きな黄緑色のZが現れ、赤い炎がトカゲオルフェノクの体のあちこちから吹き出ている。それが現れたということは、つまり、
「KNOCK OUT」
――先輩の勝利。
機械の声はトカゲオルフェノクの叫びと燃え盛る赤い炎によって聞こえることはなかった。
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