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違う組の人に追われてるのか、それとも借金取りから追われてるのか。でもサラリーマンっぽいし、それじゃあないかな。
噴水の、僕がいる位置とは逆の場所で先輩が立ち止まる。僕を少し苦い表情で睨むと、サラリーマンの方へと振り向いた。
「追いかけっこは、この辺で止めにしようぜ」
先輩がそう言うとサラリーマンはニヤリと笑う。もしや喧嘩か? 喧嘩なのか?
厄介事に巻き込まれるのは嫌なので、広場の端を通って早めに商店街を抜けようと歩く。
「そうだな。しかし、一般人がいても構わないのか?」
「おいおい、随分優しいんだな」
この話だけ聞くと完全に先輩が悪者じゃん。何してるんですか先輩。
できるだけ速めに歩いたからか、もう広場の出口についた。
これなら逃げれる、と思ったその時、『あの』懐かしい感じがサラリーマンから溢れ出てくる。
「嘘……だよね……」
『それ』はぐるりぐるりとサラリーマンの周りを渦巻いており、『それ』と共に赤黒い特殊な紋様が彼の体から浮き上がる。
『それ』は彼等が力を行使する時に現れる青い炎。一度死んだ者にしか使えない悪魔の力。
サラリーマンは灰色の化け物、オルフェノクへと変身し、ぶわり、と風が広場を駆け巡った。彼等は人それぞれ変身した時の容姿が異なり、このサラリーマンはトカゲが元になっているみたい。
「せ、先輩! 早く逃げて!」
生身の先輩がオルフェノクの攻撃を受けたら簡単に壊れてしまう。それだけは防がないといけない!
だけど、僕の言葉は聞こえてないみたいで、先輩は少しも動かず、オルフェノクへと変身したサラリーマンをずっと睨んでいる。
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