記憶―0―

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眼下に広がる緑や泉を目に留める事無く、 一心に森の中央に向かう。 進むほどに濃くなる魔力に気圧され、まだ見ぬ魔力の主を想像し、恐怖心を駆り立てられる。 悪魔か魔王か死神か 何れにせよ徒者〈タダモノ〉ではない。 無事ではすまないだろう (何事も無く終われば良いのだが…有り得ぬだろうな…) 僅かな可能性を願いながら、対象の元へ降り立った。 そして 我が目を疑った。 そこに居たのは まるで、天使の様な人間。 大樹の根元で丸くなり眠る、7~8歳程の小さな子供。 色素の薄い長めの金髪に、白い服。 男とも女ともとれる幼い顔 そして何より (…光っている) 何故か子供から淡い光が漏れ、キラキラと輝いている。 よく見ると、徐々に光は霧散して消えていっている様に見えるが、 確認しようにも 濃すぎる魔力の所為で、近寄るのは今居る5メートルの距離が限界だ。 それに この位置でさえ頭痛と吐き気、 全身を浅く切られる様な痛みがあるのに、 子供から3メートルまでの空気は、ゆらゆらと揺れていて 正直、 近寄りたく無い。
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