マルクとリル

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 橙色の斜陽が窓から射し込む。季節は春。夕暮れは日々遅くなる。冬場ならもう辺りは暗闇に包まれているだろう。 「リル、夕食にしようか。少しでも食べて早く治さないとな」 「うん。早く病気を治して、皆のお墓がある、あの丘にお兄ちゃんと花を持って行かなきゃ」  リルは儚げに微笑んだ。瞳だけはいつも希望に満ちていた。 「そうだな。皆も成長したリルの顔を見たがってるだろうしな」  両親は、マルクが八歳。リルが二歳でこの世を去った。  その後、二人はこの小さな農村で祖父が一人で二人を育てあげた。  厳しくも優しい偉大な祖父も、マルクが十六歳。リルが十歳になった年。深々と雪の降る冷たい冬の日にこの世を去った。
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