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家の2階のベランダ。
今日はとてもいい天気で、家族3人、シャボン玉を作って遊んでいた。
お父さんと、私と、まだ幼い弟。
突然、下からお母さんの悲鳴が聞こえてくる。
私たちは駆け出して、階段でリビングを目指す。
ガタン、と音がして、段が消え、階段がまるで滑り台のように変形する。
ぞっとしながら重力に任せて滑り降りていると、一番前にいた私のすぐ横に、不気味な魚が現れる。
くすんだ灰色に、大きな口。
鋭く尖った、ぎざぎざの歯。
頭からは、先端に丸い光を放つ柔らかい角のようなものが垂れ下がっている。
(ああ、鮟鱇みたい。)
一瞬私の方をギョロリと睨んだそいつは、私の右をすり抜けてすーっと飛びながら降りていく。
嫌な予感がして、急いでリビングに行くと、さっきの魚がなにやらモグモグと口を動かしている。
そばに、お母さんがよく読んでいる雑誌が落ちていた。
「お母さん…!」
やつが、私を見てニヤリと笑った気がした。
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