心配性だった彼女

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――― 「柊さん、お願いします。 …私に「速く」走る方法を教えてください。」 そう彼女に決意をあらわにしたような、凛とした表情で言われた。 そして今度は、僕がぴくっと肩を反応させてしまう。 そして、ぎりぎりと無意識にヒザにおいてある手を握り締める。 両の手のひらには汗がびっしょりとたまっていくのが感じられ、肺が締め付けられたように呼吸が苦しくなったような感じがした。 何故、「速く」走る方法を聞きたいのか。 そして、それを何故僕に聞くのか。 「速く」走る方法なら優太にでも聞けばいい、のに、何で、僕に。 その僕の切羽詰ったような表情を見て、遠山さんは頭を下げる。
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