心配性だった彼女

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上空で智恵が遠山さんを睨みつけながら言った。 どうやら、智恵は遠山さんをあまり好ましく思わないらしい。 というのも、生前から僕に近寄ってくる女は全員敵!というくらい嫉妬深かったからかもしれないが、多分今回はそういうわけではない。 僕の心配をしてくれている。 「俺からも頼む、明。」 「…優太。」 優太が僕に頭を下げて、頼み込んできた。 優太が僕に頭を下げることはめったにない。 そのくらい本気で僕に頼み込んできたのだろう。 ―でも、僕は。 ぎり、と手を握る力が強くなる。 走ることを想像しただけで、僕は、こんなにも― 「お願いします、柊さん」 「頼む、明。 今回だけでいい。」 『断りなさいって!!何躊躇してんの!?』 三人の声が次々と飛ぶ。 涙が瞳に溜まっていて手を組んでまるでお祈りでもするのかという姿で頼み込んでいる遠山さん。 いつも僕を馬鹿にして、馬鹿にされてるのにも関わらず頭を下げて頼み込んでいる優太。 そして、多分僕を心配してくれているのだろう智恵は僕と遠山さんを交互に睨みつけている。
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