心配性だった彼女

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『…練習メニュー教えるだけでいいじゃない。 明がトラウマを思い出すことない。 …一緒に、あの子のために「速く」走る必要なんて、ない。』 「いつまでも、このままじゃダメだと思うんだ。 それは僕のためにもならないって。 いい機会が来たと思う。 いい加減向き合わなくちゃって。」 僕は下を向きながら震える声で言う。 情けない、とは思う。 正直、怖い。 「速く」走る、という言葉を聴いただけで足は震えるし、声も震えるし息は速くなってめまいもするような気がする。 本気で走れるのかはわからない。 でも、このままはイヤだ。 前に、進みたいと思う。 本気で、走れるようになりたいと思う。 前のように、全国に行く一歩手前までいけたあの頃のように走りたいと思う。 「以前のように」走れないから、陸上が嫌いなだけだ。 走るのは嫌いじゃない。 ただ、怖いだけなのだ。
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