彼女の思い、僕のトラウマ

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『結構広い病院なのね、私、ここに来たことなかったからなんだか新鮮だわ。』 智恵が興味深そうにきょときょととせわしなく視線を動かす。 その彼女に対して苦笑しながら僕は言う。 「まぁ、大きな病院だからね。 智恵みたいに丈夫な人は来る機会がないんじゃないかな。」 馬鹿にされてる気がするんだけど…健康っていうのは良いことだと思うけど?と彼女は唇をとんがらせながら言った。 その様子があまりにもガキっぽいうえに可愛かったので、にやけてしまいそれを隠す為に顔に手を当てて下を向いた。 しばらくして、「14番でお待ちの方は中へどうぞー」と呼びかけられたので、僕はそれに応じて居心地の良いイスから腰をあげる。 …心臓の鼓動は明らかに早いままだったし、息は荒い。 情けないなぁ、と自嘲気味に心の中で笑ってから、見慣れた白色のドアの前に立って二回ほど控えめなノックをしてから失礼します、と言ってドアを開けた。 僕の声にすばやく反応して、そこにいた先生はばっと勢いよく振り向いた。
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