彼女の思い、僕のトラウマ

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「柊くん、かい?」 「あ…お久しぶりです、先生。」 そう言って若い黒髪の眼鏡をかけている爽やかな男の医者が「やー久しぶりだねー」と僕に向かって笑いかけてくる。 この先生は深野先生と言って中学時代に病院に来ていたときによくお世話になったお医者様だ。 智恵がふよふよと僕の後ろで漂いながら、『おおう!』と声を上げて、自分は眼鏡をかけていないくせに眼鏡のふちに触っているようなマネをしながら興奮気味に鼻息を荒くする。 『イケメン力、5000…6000…バカな、まだあがるだと…っ!!』 「ドラ●ンボールのスカウターみたいなマネしなくても。」 ボソっと僕は興奮気味の智恵に向かってツッコミを入れてやる。 深野先生に聞こえたかもしれない、と今更になって慌てるが深野先生は久しぶりの僕に会えたのがそんなに嬉しいのか 「いやー大きくなったねー50センチくらい身長伸びたんじゃない?」 とオーバーなリアクションを取っていた。 僕も深野先生に会えたのが久しぶりで嬉しくて 「そんなに伸びてないっすよ」 と笑いながら答えた。 深野先生はコホンと咳払いを一度だけしてから、カルテを取ってペンをカチカチとノックした。 「それで、今日はどうしたんだ? 2年生の時から必死になってリハビリを頑張ったおかげで日常生活に支障はなくなったじゃないか。 …、一応言っておくが。」
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