ケイ

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 立ったまま見下ろしてくるケイに苛立ち、俺もゆっくりと立ち上がる。 「な、ナイスつっこみ」  リョウが訳わかんないこと言って、俺より先に立ち上がった。 「えーっと……」  俺とケイの間で両手を広げる。  リョウの困った顔を見て、一瞬どうしようか迷ったけど……こいつには、サオリを殴った前科がある。 「武志」  後ろから、背にそっと手を添えられた。少し小刻みに動く、細い指を。 「いいのよ。私、何されても文句言えないの」 「……?」  この人は……どうしていつも、こいつを庇うのか。 「その女の言う通りだ! そいつは――一生罪を背負って生きてくんだよ!」  ケイはバカでかい声で叫んだ。  だけど室内は、かなり大きめな音量でアップテンポな音楽が流れている。  俺達のシートでの揉め事に……誰も気がつかない。  その時。 「何も背負ってない人間なんか、いねぇよ」  凜とした声が、ケイに向けられた。――真っ直ぐに。
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