5501人が本棚に入れています
本棚に追加
/336ページ
立ったまま見下ろしてくるケイに苛立ち、俺もゆっくりと立ち上がる。
「な、ナイスつっこみ」
リョウが訳わかんないこと言って、俺より先に立ち上がった。
「えーっと……」
俺とケイの間で両手を広げる。
リョウの困った顔を見て、一瞬どうしようか迷ったけど……こいつには、サオリを殴った前科がある。
「武志」
後ろから、背にそっと手を添えられた。少し小刻みに動く、細い指を。
「いいのよ。私、何されても文句言えないの」
「……?」
この人は……どうしていつも、こいつを庇うのか。
「その女の言う通りだ! そいつは――一生罪を背負って生きてくんだよ!」
ケイはバカでかい声で叫んだ。
だけど室内は、かなり大きめな音量でアップテンポな音楽が流れている。
俺達のシートでの揉め事に……誰も気がつかない。
その時。
「何も背負ってない人間なんか、いねぇよ」
凜とした声が、ケイに向けられた。――真っ直ぐに。
最初のコメントを投稿しよう!