宝物

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 夜の店には酒と、煙草と、香水の匂いが充満している。  そんなもん、カラオケだったり居酒屋だったりも同じようなもんだ。  だけど夜の店には、それだけじゃない匂いもある。  女を求める男と、男を求める女。  羨望、嫉妬、妬み。  そしてほんの少し、苦いほど純粋な好意。  ボーイとして働く俺には、そのどれもが恐ろしいほど匂って来た。 「こんな居心地悪い世界に、よく長いこと居られるよな」
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