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立ち上がったサオリさんは振り返る。
「私には、居心地がよかったの。この、曖昧で汚れた世界が」
「……別に汚れてるとは」
クスリ、と妖艶に笑うその顔は、やはりNo.1の顔だった。
「いいのよ。この世界に入ったきっかけは彼。だけど残ることを決めたのは私。
私には、天職なの。……そう言い切る私はやっぱり、優しいケンタとは一緒に居られないの」
No.1の顔から、泣きそうな女の顔に変わる。
立ち上がったまま動けない俺とリョウに微笑む。
「さぁ、もうこの店に用はないんだから。帰るわよ」
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