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「すいませーん」
少し錆びれた建物に若い少年の声が響く。
少年の名前は 杉本 拓海 (スギモト タクミ) 今年中学を卒業したばかりである。
そんな彼は 今 家出の真っ最中で、この建物はこれからしばらく暮らすであろう場所…なのだが、先ほどからいくら呼んでも一向に中から出てくる気配がない。
「叔父さーん?」
出掛けてるのか? そう思い頭を捻っていると…
「邪魔」
そう言われ、背後からど突かれた。
「っで…、何すんだよっ!!!」
そう言いながら振り返ると…アンパンを咥えながら眉間に皴を寄せる綺麗に整った顔があった。
…綺麗な人だな…
少しばかり見入っていると、ますます皴の寄った顔で睨んできた。
「…何見てんだよ、チビ」
「…!!チビじゃねぇっ!!!」
「あー、はいはい。別に吠えても良いんだけどさぁ、近所迷惑考えたほうが良いよ?君の声チワワ並みにうざいカラ」
「んなっ…?!お前っ」
「はいはい、とりあえず退こうかー」
反論しようとする俺を押しのけて中に入るムカつく奴。
「なっ…、なんなんだよアイツー!!!」
「…そこにいるのは……、拓海君…?」
拳を握りしめながら怒りを表にしていると後ろから声が掛けられた。
「あ、叔父さん?」
「やっぱり拓海君か…、どうしたんだい?」
そう尋ねられて少し口元が引きつる。
…家出してきました…なんて言えるわけがない…
「…ち、ちょっと……、遊びに来たんだ…」
「そうかい、まぁあんまり構ってやれないかもしれないけど、ゆっくりしていくと良いよ」
「うん」
…ゆっくりしていくどころか、泊まる気なんだけどな…
心の中で呟き、叔父さんの後に続いて建物の中に入った。
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