57人が本棚に入れています
本棚に追加
博麗霊夢
幻想郷の博麗神社の巫女である彼女は、幻想郷中に顔が知れている。そんな彼女は今、雨の中、妖怪の山の中腹当たりを飛んでいた。
「止みそうにないわね」
雨は降り続ける一方。体は既に塗れているが、これ以上体を冷やしては風邪をひくかもしれない。こんなことだったら雨宿りをするべきだった。そう考えながら、彼女は下を見た。ふと、ひとつの小屋が視界に入った。何かのほったて小屋だろうか?
「雨宿りぐらいならできるかしら」
高度を下げ、彼女は小屋の前へと降り立った。
「空き家かしら」
最初はそう思っていた。だがいざ中に入ってみると、人が住んでいる形跡がある。いや、妖怪かもしれない。ここは妖怪の山だ。床にはゴザが敷いてあり、中央には囲炉裏、釜戸には鍋。ここの住人は、意外と庶民的な暮らしをしているらしい。気の荒い妖怪なら、こんな暮らしはしない。ならばここにいても多分大丈夫だろう。だが念の為、警戒態勢だけはとっておく。
そんなこんなで一時間ほど経っただろうか。博麗霊夢は小屋の外に気配を感じた。足音だ。雨の音に混じり、近づいてくる。その音は小屋の前で止まった。一応、札を構える霊夢。だが、そんな彼女に外から声がかかった。
「そんな物騒な物を向けられては、入れません」
それはとても優しい声だった。
最初のコメントを投稿しよう!