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札を下ろすと戸が開き、一人の男が入ってきた。いや、まだ青年と呼ぶべきぐらいの年齢だろうか。
「真っ暗では、居心地も悪いでしょう」
男はそう言うと、小屋の隅からマッチとランプを取り出し、灯りを灯した。
やはり青年だ。暗がりでは分からなかったが、若い。だが彼は、目を閉ざしたまだ。
「ランプを着けるのも久しぶりです。どうぞこちらにいらして下さい。服が濡れてては寒いでしょう」
彼は霊夢に囲炉裏に当たるように促し、火箸で火種をいじった。微かながら、遠赤外線の熱が、体を温める。
「妖怪以外の方が来られるのは珍しい」
青年は言った。
「貴方はここに?」
囲炉裏を挟んで霊夢は尋ねる。
「はい、かれこれ200年になります」
妖怪だった。だか容姿からはそれを判断するのは難しい。何というか、妖怪らしさが感じられないのである。
「雨は朝には止むでしょう。それまでゆっくりしていってください」
青年はそう言うと、再び囲炉裏の火種をいじりだした。
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