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濡れた服はそう簡単には乾かない。しかし、このまま濡れた服を着ていては体温が下がり、風邪をひきかねない。だからと言って、人前で服を脱ぐ訳にもいかない。そんな霊夢の考えてを知ってか知らずか、妖怪はこう言った。
「私は目が見えません。服を脱いで乾かしても大丈夫ですよ、貴女の裸体は見えませんから」
そういう問題だろうか。しかし、風邪をひいてもシャレにならない。霊夢は服を脱ぎ、サラシ姿になった。すると妖怪は、霊夢の服を竹竿に通し、梁と梁に掛けた。
「朝までには、多少は乾くでしょう。それまではこれを」
妖怪は戸棚を空け、浴衣らしきものを差し出した。霊夢はそれを受け取り、羽織った。少し大きい。
「眠るなら、そこのござを使って下さい」
妖怪はそう言ったが、霊夢は寝ようとは思わなかった。万が一、この妖怪が人喰いだったら。襲われるかもしれない。この優しさは演技かもしれない。気を許すことは危険なのだ。
霊夢は眠らずに、囲炉裏の前から動かなかった。妖怪も座ったまま動かない。
朝まで、あとどれだけの時間を過ごせばいいのだろうか。
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