4人が本棚に入れています
本棚に追加
『白ヤギ。
この角っこも食べてくれ。』
そう言って、それはぼくのテストをヤギの前にフリフリした。
ヤギはちょっと味の悪さに気づいたように、モグモグを束の間止めて紙を見つめていたが、
静かにウィ~と言う口をして、ベロを覗かせると紙を口の中に引き込んだ。
クシャクシャ…クシャクシャ…
モグモグモグモグ……
「…おい!!」
握力がないのか、単にアホなのか、テストは手を離れ、スルスルと口に引き込まれて見えなくなった。
「どーすんだよっ。
母ちゃんになんて言おう…」
ぼくは焦った。
けれど、それは平然とこう言った。
『すまん。
白ヤギがかわいくて見とれていたらうっかりしてしまった。
大丈夫、母ちゃんにはワシが手紙を書いておく。』
そう言って、それは空に消えていった。
あとには、白い紙切れが落ちていた。
パソコンで打たれたその手紙を、ぼくの母が見ることはなかった。
同じくぽつんと取り残された、白ヤギが食べてしまったからだ。
「母ちゃんになんて言おう……」
ぼくの問題はヤギへと変わっていた。
空を見上げて、それを探したが、もう影も形もなかった。
………変なロケット。
最初のコメントを投稿しよう!