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その声で少年の体は再び力を帯びた。
「うわっととっと」
なんとか寸前で落ちずに済んだ。
いや。
落ちれなかった。
声がした方を見る。
少年から5、6メートル離れた隣に、一人の少女が外に足を投げだし、座っていた。
美しい。
彼女を見た瞬間
自然とそう感じた。
透き通るような白い肌。
さらりと伸びた黒髪。
作り物のような横顔。
なぜかは分からないがこの少女からはどこか儚げな美しさを感じる。
人をこんなにも美しいと思ったのは初めてかもしれない。
少女はふいに少年のほうを向く。
「あら? 死なないの?」
少女は平然と言う。
今さっき、飛び降りようとしてた人に、よくそんなことが言えるなぁ。
「ああうん。まあ、ね」
少年はあやふやに答える。すると少女はつまらなそうに少年から目を背ける。
「なーんだ。つまんない」
……なに? この人。
つまんないって……。
ていうか、いつからこの人ここに居たんだろう。俺が来た時はいなかったよーな……。
「……君はいつからここに?」
少年は少女に訊ねる。
すると、少女は振り向きニッと笑う。
「あなたが来る、ずっと前から」
少女は美しい笑顔で言う。
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