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「あ…そっか、悪い。」
懐かしい思い出に一瞬だけ浸っていると、舞瀬がしぼんだ声で謝ってきた。
「いや、そういうつもりで言った訳じゃないから…
それより、舞瀬の家はどうなんだ?
イギリスのクリスマスは違うのか?」
暗い雰囲気にならないように、話題を舞瀬に向けた。
「んー、そうだなー…
普通にツリー飾って、鶏やケーキ食べて…
ああ、ばあちゃん達と一緒に教会に行ったかな。」
舞瀬も俺と同じように思い返したのか、少し遠くを見つめて目を細めた。
「へー…
楽しそうだな。」
「あの頃はまだ両親の仕事もそれ程忙しくなかったし、藍姫は今と変わらず元気で騒がしいし。
まあ、楽しかったよ。」
舞瀬を羨むとかそんなことは思わないけど、今の舞瀬を作り上げられたその温かそうな環境を少しだけ覗いてみたくなった。
急に会話が途切れ、沈黙が流れる。
冷たく乾燥した風が頬に当たり、身をすくめる。
改めて冬なのだと思い、マフラーをきつく巻き直す。
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