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「会長……あなたって人は……」
はぁーとわざとらしくため息を吐く俺の助け船。
入学式から日が浅く、友達が一人も出来ていない俺にとって、この人の助けは天からの恵みだと言っても過言ではない。
「毎回仕事を片付ける身にもなってもらいたいですね。
あなたのせいで生徒会役員にどれだけ迷惑が掛かっているか自覚してください」
「君がいれば一発じゃないか。俺がいなくてもぱばっと」
「馬鹿ですかあなたは。
殆どが会長のサインで終わる書類ばかりです。
締め切り過ぎて謝罪するのはこっちなんですよ」
「………はーい」
おお、さすが助け船!
あの会長を大人しく出来るのはやっぱこの人だけだな!
真っ黒なツヤツヤMaxの髪に、切れ長の目でめっぽう美人。
一瞬女と勘違いしそうなくらい身体が華奢で、身長は高いっていうわけではない。
この男子校の生徒会副会長である笹原 円(ささはら まどか)先輩。
俺を入学初日から何かと助けてくれてる先輩だ。
あ、おまけとして、会長の久遠 麻琴(先輩?付ける価値なんてあるの?)は、会長とは思えないくらい服装は悪いし、髪は染めて茶髪。おまけに変態。下半身馬鹿。
なんでこんなやつが生徒会長やってるのか不思議でたまらない。
笹原先輩がやればいいのに。
と言ったら、
生徒会は人気投票で選ばれるから仕方ないと笹原先輩が教えてくれた。
まぁ、顔だけはいいからな、会長は。
「とにかく、会長は今すぐ生徒会室に戻って速やかに仕事をしなさい。
智榎くんも。嫌なら蹴飛ばしてもかまいません。
正し、仕事が出来る範囲までですよ」
「はーい」
「智榎ぁ!?それはあまりにもひどい仕打ちじゃないか!?
あー……でも智榎になら……」
「ばっ……!とっとと行けよアホっ!」
「その響きもいいね!また昼休みに会いにいくよー!」
「来るな!」
「智榎くん、馬鹿に構ってたら脳内が可笑しくなってしまいますから止めときなさい」
「はーい」
「ちかぁぁあ!」
ずるずる引きずられていく会長を笑顔で見送り、ようやく訪れた平穏にため息を吐いた。
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