第九章 業

61/265
前へ
/1544ページ
次へ
「失礼します!六朗です!」 外から、大きな声が聞こえた。 「入れ。」 入って来た六朗は、兜を外していた。 「どうした?兜は、邪魔か?」 悪戯に笑い、着座を促した。六朗は、先の戦までは、足軽に過ぎなかった。 だが、此度の戦からは、自分の副官として扱っている。 故に、着なれぬ筈なのだ。具足や兜は、初めて身に付ける様な物だ。 「い、いえ!少し汗をかきましたので、拭っていました!」 「まあ、良い。座れ。立ち続けるつもりか?」 言うと、慌てて頭を下げ、眼の前に腰を降ろした。
/1544ページ

最初のコメントを投稿しよう!

532人が本棚に入れています
本棚に追加