532人が本棚に入れています
本棚に追加
「やれやれ。忠好、もう忘れてくれよ。俺の腹が、痛いと泣いて敵わぬ。」
頼賢が歯を見せた。それにつられるように、笑顔を返した。
「まぁ、良いか。頼賢、進発が早まりそうだ。騎馬の準備をしようか。」
「既に出来ている。騎馬百、直ぐに動けるぞ。長槍、弓、そちらも直ぐに動ける。進発を待つだけだな。」
「そうか。ならば、進発の刻まで、ゆるりとするか。」
頼賢の拳に、眼をやった。自分を殺した拳。
そう言って拳を見せられた。その時には、以前と違い、鬱々とした表情は消えていた。
最初のコメントを投稿しよう!