第九章 業

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「やれやれ。忠好、もう忘れてくれよ。俺の腹が、痛いと泣いて敵わぬ。」 頼賢が歯を見せた。それにつられるように、笑顔を返した。 「まぁ、良いか。頼賢、進発が早まりそうだ。騎馬の準備をしようか。」 「既に出来ている。騎馬百、直ぐに動けるぞ。長槍、弓、そちらも直ぐに動ける。進発を待つだけだな。」 「そうか。ならば、進発の刻まで、ゆるりとするか。」 頼賢の拳に、眼をやった。自分を殺した拳。 そう言って拳を見せられた。その時には、以前と違い、鬱々とした表情は消えていた。
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