第九章 業

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「ふん、誰が信じようか。そんな旗を掲げていると、尚更な。」 信じている。不思議な程に、信用している。頼賢が裏切るとは、どうしても思えない。 「ふふ、その通りだな。だが、許せ。不肖の息子が、父にする供養だ。此度限りでも構わぬ。此度は、見逃せよ。」 頼賢は旗を見上げた。抜ける様な青に染められた、桔梗。 今江家の旗印。その桔梗は、鮮やかな物に見えた。 「まぁ、好きにするがいいさ。大殿がお許しになったのだからな。」 「あぁ、有難い事だ。兼通殿は、想像するよりも遥かに、豊かな人だった。佐々木が勝てぬ訳だ。」
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